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浦和地方裁判所 昭和44年(わ)265号 判決 1976年7月08日

本店所在地

埼玉県所沢市大字北野一七八〇番地

名称

関東医師製薬株式会社

代表者

代表取締役 近藤誠伍

本籍

東来都荒川区西日暮里四丁目一〇四〇番地

住居

東京都杉並区堀之内三の一〇の二一

会社員

近藤誠伍

明治四二年八月一八日生

出席検察官

伊藤実

主文

被告人関東医師製薬株式会社を罰金八〇〇万円に

被告人近藤誠伍を懲役八月に処する。

被告人近藤誠伍に対し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、被告人関東医師製薬株式会社の負担とする。

理由

(罪となる事実)

被告人関東医師製薬株式会社(以下被告会社という)は、昭和三五年三月設立以来、本店を埼玉県所沢市大字北野一七八〇番地に置き、医薬品、大衆医薬品の製造と販売等を営むことを目的とする株式会社であり、被告人近藤誠伍(以下被告人近藤という)は、右被告会社設立当時同会社代表取締役に就任したものの、取引上の都合により表面上一時その代表者の地位を退き、昭和四〇年六月二三日田村四郎との共同代表ながら代表取締役に復帰し、昭和四二年五月一一日単独の代表取締役に就き、前記設立以来被告会社の実権をもつ経営者であって、代表取締役として被告会社を代表しその業務全般を統括しているものであるところ、

第一、被告人近藤は、被告会社をして法人税を免れしめようと企て製品および原料の売上の一部を公表帳簿から除外するなどし、被告会社所得の一部を秘匿したうえ

一、昭和四〇年四月一日から翌四一年三月三一日までの事業年度(昭和四〇年度)において被告会社の真実の所得金額が五、〇二二万五、〇〇五円で、これに対する法人税額が一、八二五万六、六〇〇円であるのにかかわらず、同四一年五月三一日川越市三光町三六番地の一川越税務署において、同税務署長に対し所得金額が五一〇万九、二二五円で、これに対する法人税額が一五七万三、三三〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もって偽りその他不正の行為により被告会社をして右事業年度の法人税額一、六六八万三、二〇〇円を免れしめる違反行為をなし

二、昭和四一年四月一日から翌四二年三月三一日までの事業年度(昭和四一年度)において被告会社の真実の所得金額が四、四八八万三、八四九円で、これに対する法人税額が一、五二九万〇、一〇〇円であるのにかかわらず、同四二年五月三一日前記川越税務署において同税務署長に対し、所得金額が一、二五一万二、一三四円で、これに対する法人税額が三九六万八、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もって偽りその他不正の行為により被告会社をして右事業年度の法人税額一、一三二万二、〇〇〇円を免れしめる違反行為をなし

第二、被告会社は、その代表者である近藤誠伍の被告会社の業務に関する前記各偽りその他の不正行為により

一、前記第一の一記載のとおり昭和四〇年度の法人税額一、六六八万三、二〇〇円を免れ

二、前記第一の二記載のとおり昭和四一年度の法人税額一、一三二万二、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

判示全体の事実について

一、被告会社代表者兼被告人近藤誠伍(以下証拠欄において両者を兼ねて被告人という)の第二回公判調書中の供述部分

一、被告人の第三回公判廷における供述

一、被告人作成の答申書一五通

一、被告人の収税官吏に対する質問てん末書三二通

一、被告人の検察官に対する供述調書七通

一、被告人作成の提出書四通

一、公判調書中、証人秋山幸一(第四回、第一三回、第一七回、第一八回公判、以下これに準ず)、同仲章(第六回)、同藤川泰則(第一〇回)、同福原清吉(第一一回)、同待場栄一(第一二回)、同正野秀子(第一二回)の各供述部分

一、大蔵事務官矢崎茂作成の「簿外売上高および期末売掛金残高調」と題する書面

一、藤野誠一郎、加藤栄一、松尾允方(三通)、中部医薬品(株)代表取締役高木治郎、内外医師新薬(株)代表取締役田村四郎、(有)松尾順和堂代表取締役松尾久雄、関東医製新薬(株)取締役社長箕浦省三(三通)、(株)藤川商店代表取締役藤川芳男、正野秀子の各作成にかかる答申書

一、松尾允方(二通)、高木治郎、松尾久雄、大川明、春名康嗣、正野秀子、東海林晴美の収税官吏に対する各質問てん末書

一、松尾允方、江南進(二通)、渡辺重男、山下雅喜、西田憲次、高木治郎(二通)、渡辺正司、田村四郎、辻秀幸(二通)、松尾久雄、大川明(三通)、箕浦省三(三通)、春名康嗣、藤川泰則(二通)、真瀬嘉市(二通)の検察官に対する供述調書

一、(株)東海銀行岐阜駅前支店長鈴木之夫作成の書面添付の約束手形写二〇通)

一、関東医師製薬長野販売所辻秀幸作成の提出書

一、検事大和谷毅作成の長野信用金庫桜枝町支店長に対する捜査関係事項照会書添付の約束手形六通の写

一、長野信用金庫石堂支店長高松修、(株)百十四銀行本店営業部長秋山稜男作成の各回答書

一、三和銀行神田支店長梅津一郎、富士銀行神田支店長関戸新一各作成の証明書

一、住友銀行八重 口支店長代理井上明彦、大陽銀行堀之内支店長真壁孝嘉、三井銀行神田支店預金係長尾沢治雄、富士銀行方南町支店長代理富田博、第一銀行高円寺支店長杉原重夫、都民銀行茅場町支店次長大橋健二、同銀行阿佐ケ谷支店長根本治郎、協和銀行阿佐ケ谷支店長小川徳三、埼玉銀行所沢支店長水越昇各作成の答申書

一、収税官吏の日本相互銀行堀之内支店、三井銀行神田支店、第一銀行高円寺支店(三通)、富士銀行方南町支店、都民銀行茅場町支店、協和銀行阿佐ケ谷支店に対する各銀行調査関係書類

一、収税官吏色川浄作成の昭和四四年二月一〇日付調査書

一、押収してある手形発行控三綴(昭四六年押第一四七号の二二)、受取手形帳一冊(同押号の二八)藤川商店売上伝票一六綴(同押号の三七ないし三九)、領収書一一綴(同押号の四〇ないし四二)、商品出納簿三綴(同押号の四三)、仕入納品書綴一七綴(同押号の四四、四五)、製品名書替内訳表一枚(同押号の五六)、新協産業分納品書綴一綴(同押号の六〇)、同請求書綴一綴(同押号の六一)、三協薬品分納品書綴一綴(同押号の六二)、同請求書綴一綴(同押号の六三)

判示第一、第二の各一の事実について

一、川越税務署長山岸小五郎作成の昭和四四年三月一四日付証明書二通(昭和四一年三月期にかかるもの)

一、収税官吏色川浄作成の昭和四三年一一月四日付調査書

一、収税官吏秋山幸一作成の昭和五一年四月一二日付脱税額計算書(昭和四一年三月期分)

一、押収してある総勘定元帳一綴(同押号の一六)、仕入帳一綴(同押号の一八)、仕入納品書綴三綴(同押号の二〇)、元帳一綴(同押号の二四)、金銭出納帳一冊(同押号の二六)、売上帳綴一綴(同押号の二九)、仕入帳一綴(同押号の三一)、内外新薬社総勘定元帳一綴(同押号の三五)、同仕入帳(同押号の三六)

判示第一、第二の各二の事実について

一、川越税務署長山岸小五郎作成の昭和四四年三月一四日付証明書(昭和四二年三月期にかかるもの)

一、収税官吏色川浄作成の昭和四四年三月三一日付調査書

一、収税官吏色川浄作成の昭和四四年三月一五日付、同年一二月二三日付各法人税決議書

一、収税官吏秋山幸一作成の昭和五一年四月一二日付脱税額計算書(昭和四二年三月期分)

一、押収してある総勘定元帳一綴(同押号の一七)、仕入帳一綴(同押号の一九)、仕入納品書綴一三綴(同押号の二一)、元帳一綴(同押号の二五)、金銭出納帳一冊(同押号の二七)、売上帳綴一綴(同押号の三〇)、仕入帳一綴(同押号の三二)、

(法令の適用)

被告人近藤の判示第一の一、二の所為について

法人税法二五九条一項(各懲役選択)

同被告人の併合罪加重

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の一の罪の刑に加重)

同被告人に対する刑の執行猶予

刑法二五条一項

被告会社の判示第二の一、二の所為について

法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

被告会社の併合罪による罰金額合算

刑法四五条前段、四八条二項

訴訟費用の被告会社に対する負担

刑事訴訟法一八一条一項本文

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山英已)

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